作品に込めた「河井継之助の生きざま」 映画「峠 最後のサムライ」の小泉監督

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2019.12.21
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 長岡藩家老の河井継之助を描いた映画「峠 最後のサムライ」が完成し、2020年秋に公開される予定だ。講演のため新潟県長岡市を訪れた小泉堯史監督(75)に、同市などでの撮影を通じて感じたことや、作品に込めた思いを聞いた。「これぞ美しい侍、という生きざまを感じ取ってほしい」と語った。

 14年に作品を公開して以降、次回作のシナリオを書いては映画会社に持ち込んでいた小泉監督。企画が通らない日々が続く中、かつて読んだ司馬遼太郎さんの小説「峠」を思い出した。太陽に向かい飛んでいくカラスが好きだった継之助が描かれ、毎日太陽に向かって手を合わせていた祖母の姿と重なった。

 「侍とは何か。それをつかまえれば継之助をつかまえられる」と資料はほとんど読まず、原作の中に生きる継之助を捉えることに専念。「小説は上中下3巻の長い話だが、うまくまとめれば何とかなるのではないか」と脚本の執筆に着手した。継之助と、愛読書が重なっていることにも運命めいたものを感じた。

 継之助役は、信頼する役所広司さんを選んだ。出演を頼んだところ、「何があっても協力したい」と快諾してくれたという。継之助の妻おすがを松たか子さん、小千谷談判で会談した岩村精一郎を吉岡秀隆さんが演じる。「それぞれが想像力を持って芝居に臨んでくれた」と話す。

 川を挟んでの合戦や渡河のシーンは与板地域の信濃川で、小千谷談判は南魚沼市の寺「雲洞庵」で撮影した。延べ2500人のエキストラが参加した。

 「新潟だから撮れた映画。長岡フィルムコミッション(長岡ロケなび)がベストなロケ地を探してくれた。県内各地からたくさんの人が参加し、朝早くからわらじを履いて、よろいを着て頑張ってくれたことに感謝したい」とねぎらった。

 黒沢明監督の助監督時代から、現場の技術力が問われるフィルム撮影にこだわっている。ただ、今回初めてCGを取り入れ、迫力ある合戦を表現しようと砲弾の爆発を大きくしたり、人数を増やしたりした。

 継之助らが長岡甚句を踊る場面も出てくる。「長岡の雰囲気を使ってみようかなと思った。見ていてるだけで面白い。武人らしさだけでなく、粋な一面が伝わってくれたらいいな」と笑顔を見せた。

 「継之助が生きた時代の経験は地域に受け継がれ、何があっても上を向く心は長岡人の中に宿っている。だから災害があっても乗り越えてこられた。彼の生きざまから伝わる品位や品格は、これからの時代で大切なことだ」と訴えた。

<こいずみ・たかし>1944年水戸市生まれ。早稲田大卒。故黒沢明監督の下で助監督を務めるなど28年にわたり「黒沢組」として映画製作に携わった。監督代表作は「雨あがる」「博士の愛した数式」「蜩ノ記」など。