嘘吐きで無責任の高田川親方を懲戒処分にしろ!

コロナ死、勝武士さんを「救う方法」あったのか 一部報道に医療従事者「たらい回しありえない」 角界の危機管理体制に疑問

5/19(火) 16:56配信

夕刊フジ

 新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため、13日に28歳で亡くなった大相撲の三段目力士、勝武士(しょうぶし)さん。所属の高田川部屋(東京都江東区)は、高熱を出した当初は「医療機関の受け入れ先が見つからなかった」と日本相撲協会に報告したというが、都内の医療従事者は「救う方法はほかにあったはずだ」と疑問を呈する。今後予想される感染拡大の第2波に向けて、今回の悲劇を繰り返さないためにも、角界の危機管理体制を検証する。(夕刊フジ編集委員・久保武司)



 勝武士さんの死は角界にとどまらず、日本全体にとって衝撃的な出来事だった。厚労省によれば、新型コロナウイルスによる20代の死者は初めて。現役力士はもちろん、アスリートの訃報も初めてだった。

 相撲協会の発表によると、勝武士さんは4月4日に38度を超す高熱を出した。師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)らが保健所に翌5日まで電話をかけ続けたが、つながらず。近隣の複数の病院にも相談したが、6日までに受け入れ先を見つけることはできなかった。

 東京都健康安全部感染症対策課は「保健所が土日(4月4、5日)休業だった場合、都のコールセンターに電話するようアナウンスをしているはずです。われわれの方で通話記録を確認しましたが、(高田川部屋関係者の)お名前はありませんでした。こちらにも、つながらなかったのかもしれませんが…」と話す。

 勝武士さんの熱が下がらないまま、8日になって血痰が見られたため、救急車を呼んだが受け入れ先は見つからず。夜になってようやく、都内の大学病院に搬送された。

 勝武士さんが高熱を出した4日は、東京都の新規感染者数が初めて100人を超えた日だった。3月下旬に台東区の病院で集団感染が発生し、「東京でも医療崩壊が起こる」と危機感が募っていた時期だ。「たらい回しにされなければ救える命だった」として、当時の医療体制に改めて批判の目も向けられている。

 だが、都内のある医療従事者は「たらい回しにされたというような報道が多くあったことが残念。方法はいくらでもあったはず」と反論する。

 相撲協会は両国国技館内に相撲診療所を開設。大手病院に勤務していた医師らが診察している。この医療従事者は「都内の診療所であれば、“横のつながり”が必ずある。きちんとした体制が取れているなら、救急の事態には医師同士の関係で多くの対策がとれる。われわれは命を守るのが仕事。東京都ではどんな病気でも、重症者がたらい回しになるということはまずありえない」として、高田川部屋の初期対応に疑問を呈する。

 相談できる相手は多数いたはずだ。「相撲協会の幹部や部屋持ち親方のつてもあるし、タニマチの面々にも医療関係者はいる」。春場所8日目の3月15日に発熱で休場した幕内の千代丸は、10日目にPCR検査を受け陰性と判明。11日目から再出場している。「なんで千代丸はすぐ検査できたのに、勝武士はできなかったのか」といぶかしむ声が、ほかの部屋から上がるのも無理はない。

 勝武士さんは入院先の簡易検査でコロナ陰性とされたが、9日に状態が悪化。別の大学病院に転院し、10日にPCR検査で陽性と判定された。相撲協会は部屋やしこ名を伏せて“第1号感染者”を発表。以降も「容体は安定している」と伝えていたが、19日には集中治療室に入った。それでも協会はまだ5月の夏場所開催を模索していた。

 4月25日には「高田川親方、同部屋の十両・白鷹山ら新たに6人の協会員が感染して入院中」と明らかにしたが、わずか5日後の30日に全員の退院を発表。しかし勝武士さんはその半月後に、帰らぬ人となった。

 受け入れ体制がスムーズなら、避けられたかもしれない悲劇。東京都は「コールセンターの回線数を増やす対策をしました」(健康安全部感染症対策課)。感染者を確実に搬送できる仕組みもより強固に整えた。相撲協会も「ある報道でたらい回しとあったが、逼迫した状況の中で受け入れ先がなかったということ。たらい回しということではない」と責任を問う意思はないが、当時の状況のせいで片付けてよいのか。所属部屋や協会の対応次第で、最悪の事態を防げなかったかを検証するのは、また別問題だ。

 ただでさえ、基礎疾患を抱えた力士は多く、重症化して医療機関に負担をかけるリスクは高い。自分たちの身を守るための自助努力が必要だ。

 相撲協会は18日、力士や親方ら900人余の協会員を対象とし、コロナ感染歴などを調べる抗体検査を開始したと発表。希望者全員に実施し、約1カ月で終了する予定だというが、抜本的な解決策にはほど遠い。

 力士たちから「相撲部屋は3密の極致ですから」との声が上がる集団生活にも、「新しい生活様式」のガイドラインは示されないまま。勝武士さんの非業の死を無駄にしてはならない。

 

最終更新:5/19(火) 16:56
夕刊フジ